運営者情報

運営会社

株式会社ピープルメディア

ピープルメディアは、大学における研究成果を広く社会で活用していただくことを目的として、2002年に硴崎が設立した大学発ベンチャー企業です。


教材およびシステム作成者

硴崎賢一(かきざきけんいち)

  • 取締役開発部長
  • 九州工業大学 名誉教授
  • 博士(工学)大阪大学

硴崎は、日本初の情報工学部に1988年から36年間勤務し、情報工学に関する教育と研究に従事し、2024年に定年退職しました。長年にわたって大学で培った情報工学とその教育に関する知識と経験を、ICT教育、教育の情報化にご活用いただければと考えています。


大学教育

大学における教育活動は、学部においては、計算機構成(計算機ハードウェア)、オペレーティングシステム、データベース、コンピュータグラフィックス、情報通信、ソフトウェア工学、プログラミング、プログラム設計、オブジェクト指向プログラミング、プログラミング応用、組込みプログラミングなどの授業と演習を担当しました。特にプログラミング教育に関しては、C言語とJavaを主に、30年にわたり授業と演習を担当し、情報工学部の全学科のプログラミング教育の企画、教科書作成、実施に関し主導的な役割を担いました。

大学院においては、空間情報処理(特に3次元GIS、VRシステム)に関する理論的、実践的な授業と演習を担当しました。


ICT教育・教育の情報化への取り組み

硴崎の研究の主な研究分野は、三次元コンピュータグラフィックスや空間情報処理で学校教育関係ではないのですが、初等・中等教育における教育への情報技術の活用や、情報教育に対する必要性を強く感じ、e-Japan構想が掲げられ教育の情報化元年ともいえる2000年以前から、研究成果や情報工学やその応用に関する知見を基に、教育の情報化に対する取り組みを開始しています。

遠隔教育支援

コロナ禍の影響で、今や遠隔授業は小中高校や大学で一般的な授業実施方式となりました。しかしながら、2000年前後においては、遠隔授業は技術や制度的に課題が山積みで、研究開発やその成果を考慮した制度変更を必要とする未来の教育形態でした。

九州工業大学はメディア教育開発センターと北陸先端科学技術大学院大学と共同で、情報システムとインターネットを活用した将来の遠隔授業を見据えて、1999年からバーチャルユニバーシティ・プロジェクトに取り組みました。バーチャルユニバーシティ・プロジェクトは、インターネット技術とマルチメディア技術を駆使した次世代の大学の遠隔授業の実現に必要な機材や情報システム構成、教材の作成方法、遠隔授業の実施方法などを実践的に明らかにしようとする先進的なプロジェクトでした。硴崎は、九州工業大学におけるプロジェクト責任者として、計画の立案、準備、機材の選定と構成、教材の撮影、編集など多岐にわたる研究開発及び実務作業を主導しました。

バーチャルユニバーシティ・プロジェクトで多くの教員が遠隔教材の開発経験を持つとともに、遠隔教育のための情報システム基盤の管理運営の知見や経験が蓄積されていたため、コロナ禍においては、九州工業大学は最も迅速かつスムーズに授業や演習を遠隔教育に切り替えられた大学の一つとなりました。

WEBGISを活用した教育の情報化

2000年度、2001年度の2年間にわたり、文部省と通産省の外郭団体CEC (Center for Educational Computing) からEスクエア・プロジェクトの先進企画プロジェクトとして助成を受け、エデュマップ・プロジェクトを多数の自治体と学校の参加を得て実施しました。エデュマップ・プロジェクトは、硴崎の研究成果として開発されたWEBブラウザで利用できる地理情報システム(電子地図: WEBGIS)を小中学校の教育に応用したもので、その教育活動は2006年にSTEAM教育と名付けられた活動の先駆けとなりました。

今でこそWeb上で使用できる電子地図は当たり前の情報サービスとなっていますが、エデュマップ・プロジェクトはGoogle Mapが公開された2005年から5年も先行して実施された技術的にも教育的にも先進的な教育プロジェクトでした。エデュマップとそのWEBGISには、以下のように現在でも陳腐化していない意欲的で先進的な特徴がありました。

  1. Webブラウザで利用できる電子地図に
  2. 場所と関連付けて授業で調べた・学んだ様々な情報を書き込むことが可能で
  3. 書き込まれた情報をインターネット上で発信でき
  4. 複数の学校が同じ課題のプロジェクトの成果をインターネット上で共有でき
  5. 子供たちの学習活動の成果を家庭で家族と共に参照して話題にできる

CEC Eスクエアプロジェクト成果発表会の資料

平成12年度の報告書概要

エデュマッププロジェクトで開発されたWEBGISは、その後も機能強化され、長崎県の佐々町をはじめいくつかの自治体の地域情報発信システムや教育情報システムとして採用されました。特に、2005年に岡山駅駅前に開設された「岡山市デジタルミュージアム」(現:岡山シティミュージアム)の地域情報の紹介・展示システムの中核システムとして3次元GISと統合された形で採用され、多くの児童・生徒、市民や観光者に利用されました。

遠隔プログラミング演習支援システム

SmartPyのひな型となる研究で、コロナ禍で突如、大学における講義や演習を遠隔実施に切り替えることが求められた際に、プログラミングの遠隔演習の問題への対抗策として研究開発を開始したプロジェクトです。

コロナ禍以前の対面授業・演習では演台に立って講義を行い、演習時には演台から100人の学生の演習への取り組みや挙動を俯瞰して学生の大まかな状況を確認することができました。さらに、TAも交えて学生の間を巡回し、学生のPC画面や手の動き、学生間の対話の内容を確認しながら、演習の進捗状況や問題に突き当たっている学生を確認することができていました。

ところがコロナ禍で、1ヶ月の準備期間で講義はもちろん演習も遠隔実施に切り替えるよう大学から指示がありました。講義はともかく演習では、学生の挙動を把握することができず、問題を抱えている学生を見つけ、適切な指導を行うことができなくなるため、どのようにしてプログラミング演習を行うか途方に暮れたことを覚えています。

この問題を解決するために遠隔で実施するプログラミング演習でも、対面と同様の指導ができるような支援システムの研究開発を始めました。単純に遠隔授業でプログラミング演習ができるシステムを開発しようというのではなく、100人の学生を対象とした遠隔授業で、対面授業以上に、クラス全体の進捗状況と、各学生の進捗状況を把握し、クラス全体と各学生に適切な指導を行えるシステムを実現することを目指した研究です。

参考として、研究室の修士学生に発表させた論文を以下に示します。